考える人(ロダン)には美しいS字ラインが隠されています。このラインは像を彫刻するときの黄金律です。しかし、このS字ラインを必ずしも彫刻作品に取り入れなければならないという訳ではありませんが、この美しい揺らぎは、見る人に微妙な美しさも感じさせるので使わない手はないと思います。
特に人間の彫刻などを写真に撮るときには、S字が像の佇まいのどこに隠されているのかをじっくりと落ち着いて探してから撮影に取りかかると良いと思います。
「考える人」のブロンズ像は東京の国立西洋美術館、名古屋市博物館、京都国立博物館の三カ所で見たことがあります。
「考える人」のブロンズ像は東京の国立西洋美術館、名古屋市博物館、京都国立博物館の三カ所で見たことがあるのですが、京都国立博物館の庭に設置されている「考える人」が個人的には好みです。おかしなもので、3体とも同じ像なのに好みが生まれるというのは不思議なのですが、その理由を考えてみました。
それは「考える人」を乗せている土台と鑑賞距離などによるものだと思います。
京都国立博物館の「考える人」は、好きな距離と位置から見ることが出来ます。少しずつ見る位置をずらしながら360°ぐるっと回って鑑賞できるのです。そして正面から見たときの背景が美しいのです。
それに加えて、土台が小ぶりで、その上に「考える人」を土台の中心からずらして(オフセットしているように見える)乗せてあります。この不安定さが繊細さを醸し出しています。たぶんそのデリケートに感じさせる部分が、黄金律のS字造形を一層強調させて艶っぽく見せるからなのだろと推測しています。
国立西洋美術館は正面の庭に大きくて有名な彫刻がいくつも設置してあるので、スペースをこれ以上取れそうにありません。またル・コルビジュがデザインした本館の建物が世界遺産になっていることから、その建物も鑑賞して貰わないといけなくなったので「考える人」だけのためにスペースを新たに設けるのはは無理そうです。それがあって鑑賞には少し我慢を強いられます。
名古屋市博物館は、屋内にあるので当然のことながら、鑑賞や撮影にもスペース的な制限があります。
そのようなわけで、京都の「考える人」は美しくフレンドリーだとも思うのです。
ちなみに「考える人」と比べるのははばかられますが、先日見た松平・徳川の菩提寺である大樹寺の羅漢さんの中にも「考える羅漢さん」がいらっしゃって、ポーズも「考える人」によく似ています。「考える人」と同様にS字のラインで構成されていて安定感があります。
写真を並べておきましたから比べてください。
じつは、この記事は大樹寺の羅漢さんを見て触発されて書いた記事です。見たところ羅漢さんの方が年代は古そうです。つまりS字のラインには(普遍的な)黄金律が昔からあると言うことになります。
また、東大寺の金剛力士像もS字ラインで構成されています。
写真で見るとS字ラインであることがわかります。東大寺金剛力士像の阿形吽形像は、右側の阿形像がS字、左側の吽形像が逆S字のスタイルで左右対をなしていて、美しい安定感を醸し出しています。
リンクは東大寺の金剛力士像の写真のサイトに飛びます。
ロダンの{考える人」は左膝を正面にして撮影すると筋肉と骨格の力強さとS字の柔らかさが表現できます。
国立西洋美術館 https://www.nmwa.go.jp/jp/index.html
名古屋市博物館 http://www.museum.city.nagoya.jp/
京都国立博物館 https://www.kyohaku.go.jp/jp/