家康がひとり立ちする最初のピンチを救った大樹寺にある羅漢像は山門の近くの目立たぬ場所にあって喜怒哀楽を奔放に体全体で表現しています。
羅漢像と対話しながらひとつひとつ見て回ると、こんがらがってもつれてしまった心が解(ほど)けます。
羅漢像には表面が長年の雨風で風化してしまっているものもあるので、よく見ないと表情や体のポーズが一見ではわかりにくい像もありますが、そんな羅漢像でも一体ずつの目鼻を探して見つけるとその表情や姿を理解することは簡単です。
最初に見つけた羅漢さんは灯籠を頭に乗せられて首が真横に曲がってしまっています。
サッカーボールを頭でコントロールするのと同じように、石の灯籠を頭でボールのようにもてあそんでいるのとは違うようです。
その姿はキュービズム的で灯籠の下に顔があり、めちゃくちゃ重たくて痛いはずなのに口をへの字に曲げて精一杯平静を装っているように見えます。足元には「羅漢のうたげ」と彫られています。
奈良の戒壇堂で見たことのある四天王(増長天、広目天、多聞天、持国天)に踏み潰されている天邪鬼(あまのじゃく)の姿を思い出します。そうです、きっとこの羅漢さんの性格は天邪鬼なので、その罰として灯籠を頭に置かれて顔が曲がってしまったのです。
そにもかかわらずなお平気そうに、このヤロウと反発した表情で苦しさを見せずにその場を繕っているところが天邪鬼の性格そのもののように見えます。
こんなに酷いことをされているにもかかわらずこの表情ですから、きっとこの羅漢さんは自分の天邪鬼な性格を死ぬまで背負っていかなければならないのでしょう。
そう簡単には心を改めそうには思えません。
@愛知県岡崎市