大阪城を男の城といった作家の今東光さん。
産経新聞社時代の司馬遼太郎さんが企画出版した「美の脇役」の中での言葉です。
今東光さん(1898-1977)は大阪城の石垣を見て男の城だと感じたようです。
それは、ご自身の小説の中ではありません。
先にも述べた、産経新聞社が出版した「美の脇役」の中でそうお書きになっています。
その「美の脇役」は産経新聞社時代の司馬遼太郎さんの企画で出版されました。
同じく産経新聞社時代の写真家、井上博道さんの撮影によって構成されています。
歴史や寺院、仏像ヘの造詣が深い二人が、美の脇役として吟味した被写体があります。
それを撮影した写真に著名な案内役の方々の解説が添えられます。
選り抜きの写真と造詣の深い解説よって楽しめる構成になっています。
写真好きの方には写真を撮るためのバイブルになるほど内容の濃い本です。
今東光さんは大阪城を男の城といった。
・・・この金城が愛すべき愚かな女と、正確な判断力にさえ乏しい若大将によって、あえなく落城したことを悲しみ、その後幾歳月を経ても、ついに城として機能しなかった廃城を見てそこに殺風景をくみ取らずにはいられないのだ。
江戸城が女ならば疑いもなく大阪城は男だ。
僕はこの対照を、城という物を考える上において面白いと思っている。
(作家・今東光)
美の脇役より引用
最初の白黒写真は「美の脇役」の中の再現写真です。
井上博道さんの写真をまねて撮ってみました。
現在の大阪城は徳川幕府時代に再建された城です。
しかし、石垣が静かにスルッと堀の水の中に滑り込んでいる姿は上品でとても優美な眺めです。
大阪城を男の城といった今東光さんですが、私にはゆったりとして上品に映ります。
しかし石垣を眺めていると、その石組みの奥に隠された強靱さを感じます。